前途多難!!那珂川ツアーのはじまり!!
今回の那珂川下り参加メンバーは、「技術部長」町田さん、「高崎のヘアリスト」室岡さん、「用心棒」 武藤さん、「おとぼけ山岸君」の4名がすでに一足先に現地入りしている。
そして、明日から「天変地異を呼ぶ男」大松さん、「平成の大魔人」横田さん、「玉淀の怪人」海津さん、「企画広報編集人」こと寒河江が合流して、みんなで那珂川を下ろうという計画なのである。
翌日、残りのメンバーと烏山町に入り、那珂川の境橋を降りた川原で先発隊と合流した。
「昨日は、烏山から御前山までを武藤さんとファルトで下ったんですが、とても快調でしたよ」と、おとぼけ山岸君が笑顔で出迎える。
町田さん、今日はどうする?」と、本日の予定を僕が聞く。
「ここから下はつまらないから、上流の黒羽から烏山までが良いと思うんだけど、25Km位!!」と、町田、 室岡のホワイトウォーターコンビが言った。
ちょっと距離が長すぎる様な気もしたが、先発偵察隊の意見を尊重して従うことにする。
しかしこの後、思いも寄らない事件へと発展していく事を誰も予想しなかった。
室岡さんのキャンピングカーを回収車として1台残し上流に向かう。烏山町を後にして黒羽町まで、車で約1時間。
山岸君と武藤さんがファルトを組み立て始めるが、昨日の川下りの時に壊れたのか?2人艇のポールの1本が折れている。
応急処置として、スパナを当て木の代わりにして、ガムテープで固定をする。 僕の方はというと…。
フェザークラフトのパーツが足りない?
船体に張りを加えるテンションポールをセットする時に使う、テコの役割をするポールを忘れて来てしまったようだ!!
このポールは他のポールよりも少し長く、収納ザックに収まらず、運ぶときに難があるのだ。何しにここまで来たのだろう。
半分あきらめ気分の僕をよそに、外野が騒ぎ始め慌ただしく動きだす。
みんなで力任せに引っ張ってみる。
「やはり無理か?」
落ちていた棒切れを代用してみるが、長さが合わないのか?うまくいかない!!
「それじゃ!!」と、武藤さんが力まかせに「ドリャー!!」 見事にポールが1本曲がった!!「ギョエ〜」
「ジャッキアップだな!!」と、海津さんが叫ぶ!!
僕が走って車からジャッキを取り出すと、海津さんがジャッキを片手に「ニヤリ」と、微笑み、少しずつジャッキアップしていく。
何度か角度を変えて、1本づつテンションをかけていき、どうにか5本全てのポールをセットしてしまった!!
最後に忘れてきたポールの換わりにタープのポールを代用して、ガムテープでぐるぐる巻きにして、みごと完成!!
ここまでの所要時間、1時間20分、延べ人数8人、使用工具はジャッキ、棒切れ、ガムテープ他。
これで、フェザークラフトはジャッキアップでも組み立てられる事が見事に証明できたのである。
町田(オーバーフロー)、室岡(トランジッション)、武藤、山岸(フジタST−2)、大松(スプリット)、横田(ピロエットS)、海津(マイクロバット)、寒河江(フェザークラフト)の8名は、昼食を済ませ午後の1時、ようやく那珂橋をスタートする。
スタート直後、最初の瀬で横田さんが沈脱! 自力で岸までたどり着き、再び元気に漕ぎ出す。まだまだ先は長い!!
室岡さんが先に瀬を下り、手を振って水深のあるコースをファルト組に合図をお送ってくる。
2〜3級の瀬もあるが、全体に水量は少なく、本流を探しながらの川下りとなり、浅瀬に乗り上げライニングダウンをしなければならない所もでてきた。
「昨日は一度もカヌーから降りないで、下れたから良かった」と、武藤さんと山岸君が話をしている。
この2人は川下りの経験が乏しく、コース取りが悪くて、隠れ岩を目掛けて?瀬に突入して行ってしまうので、早くも船体布に数カ所の穴を開けてしまい、浸水を始めているようだ。
しかも、浅瀬で力まかせのパドリングで武藤さんは、パドルブレードをもぎ取ってしまった!!
手頃な岸に上陸し、那珂川ツアー緊急対策本部が置かれ、被害状況を確認し、ガムテープで補修を試みるが、水に濡れていてテープが着かない。
「マンガみたいに、水がピューッと噴水のように噴き出して来るんですよ」と、ニコニコと嬉しそうに、おとぼけ山岸君が言った。
「寒河江さんここであがって、あの上流に見える橋で待ってようか?」と、武藤さんが言った。
「ちょっと待って」と、僕は川地図を広げる。そこに見える橋は、まだ湯殿大橋で、スターとしてから、まだ6Kmほどの所である。風はさらに強くなり時折10mを越える突風も吹き出して来ている。
確かにこの状態では、最後まで下るのは無理だし、それにきっと迎えが来るのは、陽が暮れてからになりそうな状況である。
「武藤さん、この先の広瀬の水門でみんな休憩して待っているはずだから、とりあえず、何とかそこまで漕ごう!!山岸君行くぞ!!」と、2人を励まし、再び那珂川下りを始める。
ようやく広瀬の水門が見えて来た最後の瀬で、2人艇は再び隠れ岩に激突して、フレームのリブを折ってしまい漕行不能状態!!
武藤さんは、カヌーを降りて川原を歩き、山岸君ひとりが何とか水門まで流れ着いた。
スタートから10Km。
川下り続行隊と温泉隊を結成!!
午後3時。みんなと合流して、再び緊急対策本部が置かれ、状況説明と今後の対策が練られる。
「このまま下っても、暗くなって、最後までたどり着けないんじゃないか?水門の下で釣りをしている人に、スターとした那珂橋まで車に乗せてもらえるか、聞いてみようか?」と、僕が言うと。
「暗くても星明かりで、漕げるよ」と、大松さん。
「1時間半もあれば着くよ」と、室岡さん。
「大丈夫だよ!!」と、楽観的な町田さん。
いずれにしても、2人艇は漕行不可能だし、ここでリタイヤすることになるが、何処で待つかだ?
「直ぐ上流の対岸に、温泉があるからそこでお風呂に入って、待っていれば?」 と、鮎釣りでこの辺りに詳しい大松さんが言った。
「でも、お金持ってないよ」と、僕はみんなの顔を見渡す。
「少しならありますよ」と、横田さんが手持ちのお金を差し出す。
そこで急遽「温泉隊」が結成され、山岸君に海津さんと僕、そして、いま河原を歩いてここに向かっている武藤さん、以上の4名がここで川下りをリタイヤすることとになった。
そして、最後までゴールの境橋を目指すのは、町田さん、室岡さん、大松さん、横田さんの4名によっ て「川下り続行隊」も結成されたのである。
温泉隊は上流に向かってカヌーを引っ張り、そして漕ぎ上がり何とか対岸に渡って、ひとりで川原を歩いて下ってきた、武藤さんと合流した。
「武藤さん、ご苦労さん!!」と、僕。
「いやぁ、まいったね!!」と、笑いながら答える武藤さん。
「武藤さん、お金持ってる?」と、僕が聞く。
「うん、3,000円ぐらいならあるよ」と武藤さん。
「よし、温泉に行こう!!この直ぐ上にあるらしいんだ!!」と、僕が笑顔で言った。「馬頭町営温泉ゆりがねの湯」の駐車場の一角にカヌーと荷物を降ろす。
「山岸君!!ライフジャケットは脱いで、長靴の中の水も出してから行けよ!!」
「大人500円、小中学生と70歳以上は300円だって書いてある」と、海津さん。
「ここであがって正解だよ、先に行った連中は地獄だ」などと、温泉隊はくつろぎ始めていた。
那珂川下りを続行!!さて、その先は?
一方の川下り続行隊は午後3時30分、水門の堰提をポテージして漕ぎ出していった。 再び漕ぎ出した後はトロ場が続き、大松さんは、室岡さん、町田さん、そして横田さんにも置いてきぼりにされ、少しずつ距離が開いてきている。
大松さんは、新那珂川橋を過ぎた辺りで一度みんなに追いついたようだが、また水を開けられしまい、再び単独行になってしまったようだ。
この時期の那珂川は全面禁漁となり、組合員によるサケとモクズガニのヤナだけが許されていて、時々サケやハヤをねらった釣り人を、見かける以外は、ほとんど人影は無い。陽は西に傾きはじめ、川下り続行隊のメンバーには焦りの色が見え始めていた。
秋の夕日はつるべ落としと言うように、ランプの明かりが消えるように、辺りが暗くなってきて、大松さんの少し前を先漕する3人の姿が、確認しずらくなってきている。
寒空に輝く星を眺めながら、カヌーを漕げる喜びもあるが、どこかもの悲しい。などと、感傷に浸っていた大松さんは、ちょっとした瀬の隠れ岩に乗り上げ、あえなく沈脱!! 「もう、沈脱をしないぞ!!」と、心に決めていた横田さんも、すでに2度目の沈脱をしていた!!
「暗くなっても星明かりで漕げる」と、言っていた大松さんは、星明かりで見事にコケた!!
再び漕ぎ出す大松さん。正面に明るい大きな橋が見えてきて橋の外灯が明るすぎて水面が見えず、どちらに漕いで良いものか?困り果てていると……。
「おーい!!おーい!!」「大松さ〜ん!!」と、どこからか?叫び声が聞こえてきた!!
「おーい!!おーい!!どこだ〜!!」と、声がする方に漕いでいくと、橋のたもとには、寒さに震え心配そうに、こちらを見ているみんながいた!!
「いやぁ、良かった」と、ほっと胸をなで下ろす大松さんであった。
さすがに川の達人コンビもこの暗闇では、続行不可能と判断したのか、場所も分からずに、午後5時30分上陸。ここにカヌーを置いて、歩いてゴールを目指す事にしたようだ。
とりあえず橋の上まで出て、橋の名前を確認したかったが、橋には那珂川としか表示が無い。
「ゴールの境橋の近くまで来ていることは確かだ!!」と、町田さん。
「この橋は、境橋のひとつ上流にある橋かな?」と、大松さん。
仕方なく川下り続行隊の4名は、今度は道を下流に歩き出しゴールを目指す。
「境橋は,あと30分ぐらい真っ直ぐ行くと信号があって、それを左折すればいい」と、途中ウォーキングをしている2人連れが、教えてくれた。
頭にヘルメットを付け、ライフジャケット、スプレースカートを身にまとう、怪しげな地球防衛軍ウルトラ警備隊のような、川下り続行隊の4名はひたすらゴールの境橋を目差すのであった。
焼き肉定食が食べたいなぁ〜」と、町田さんが道路際のレストランの看板を眺めている。
川下り続行隊の持ち金は全て、温泉隊に渡してしまってあるので、一銭もない!!みんな腹は減るし、境橋はまだだし、寒いし、疲れたし、自分達はいったい何で、こんな事をしているのだろう……?
自問自答しながら、境橋のキャンプ場にたどり着いたのは6時30分。上陸してから1時間を経過!!
直ぐに車に乗り込み,室岡さんが車のハンドルを握りキャンピング回収号を走らせる。
みんな温泉に無事に入れたのか?7時で営業終了か?それまでに着かないと外に放り出されてしまうのか?と心配になり、馬頭温泉に向かう川下り続行隊。
たきぎ工場 那珂川ツアー参加者 涙の再会!!
その頃馬頭町営温泉ゆりがねの湯では、温泉隊は風呂で暖まり、待合室ロビーでやることもなく、給湯器の無料のお茶ばかり飲んでいた。
待ちくたびれた海津さんは、長椅子に横になって眠ってしまっている。
もうすでに7時過ぎ、広瀬の水門を再スターとして4時間が経っている。
「何かあったんじゃぁ、ないの?」と、心配そうに武藤さんがポツリと言った。
「きっと陽が暮れて、たどり着けなくて、歩ってゴールを目差しているんだよ」と、僕が言う。
などと、温泉隊はだんだんと、川下り続行隊の事が心配になってきていた……。
突如、暗闇を切り裂くヘッドライトの光!!
「おーい、来たぞ!!キャンピングカーだ!!」と、僕が叫ぶ。
7時30分ようやく、回収車が来た!
「遅かったね!!みんな無事?」と、温泉隊。
「とりあえず、そのまま乗って」と、川下り続行隊。
温泉隊がキャンピングカーに乗り込み、再び無事に参加者全員が顔を合わせることが出来!!
スタート地点の那珂橋に着いたのは、夜の8時過ぎだった。
「たきぎ工場は、いつもこんな事をしているの」と、初参加で疲れきった顔の横田さんが言った。
「うん、たまにネッ!!」と、笑いながら答える、たきぎ工場のメンバー達。
「エ〜ッ!!」と、あきれ顔で横田さんが空を見上げる。
夜空では「たきぎ工場」のドタバタ劇を笑っているかのように星が輝いていた。
『編集後記』
今回の那珂川ツアーは、下調べ不足、判断ミス、忘れ物、人の話を聞かない等、たきぎ工場の良いところ?がすべて出て、大変楽しい川下りとなった!!
今後は、これを教訓にして、もっと楽しく遊べるように、頑張ろう!! (企画広報編集人)
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