雨天決行!秋の奥利根キャンプ!
雨に煙る関越自動車道を北に向け走っていると「今どの辺にいるの」と、携帯電話に海津さんから連絡が入った。
「少し前に上里SAを過ぎたところだよ」と、辺りを見渡して答える。
「それじゃ、寒河江さんのすぐ前を走っているのかな」と、言っていた海津さんの車がしばらくして後ろから追いついてきた。
2台で待ち合わせの赤城高原SAに入るとすでに飯田君が車の中で寝て待っていた。 軽く朝食を取り、今日から参加すると言っていた町田さんに連絡を入れてみると、どうやら川遊びがたたったのか風邪が抜けないようなので今回は残念ながら不参加となった。
本日から2泊する参加者は、玉淀の怪人海津、町役人南雲、広報編集人寒河江の3名、発熱体飯田は日曜日に仕事があるので、1泊で帰るか2泊して早朝に撤収するかを迷っている。
そして1日遅れで用心棒武藤、笑顔の斉藤と川仲間の高岸君が加わる予定になっている。
台風10号接近中?キャンプは大丈夫か??
水上インターで高速を下りダムに向かう途中でいつものキノコ屋に立ち寄るのだが、ちょっと様子が違うようだ。
話を聞くと8月末に発生した台風4号がもたらした大雨で、道路脇に建つキノコの販売小屋がすぐ裏を流れる川の増水で一気に押し流されてしまったそうである。
「すぐそこにあった電柱も流されちゃって、電力会社の人がずいぶん探していたけど、見つかんなかった……」と、おばちゃんが話してくれた。
南海上を日本列島を沿うように北上を続けた台風4号は本州の前線を刺激して豪雨を降らし、東日本を中心に大きな被害をもたらした。はんらんした那珂川の濁流が民家を押し流していくテレビ映像もまだ記憶に新しいところである。
ここ群馬県水上町の上越線水上−土合駅間でも、土合駅のホームと線路が土砂で埋まったり、線路下が崩れるなどの被害が出ているのだ。
道路の方も水上町から上がってくる途中にも、所々崖崩れや道路の陥没などの復旧工事のため、片側交互通行になっている箇所がいくつかあった。
その後9月に入っても、台風が立て続けに日本列島を襲い大雨をふらしているのだ。 そんな訳で、今年はキノコがあまりとれていないと、言う話である。
「今日はキャンプかい?キノコこれしかなけど、おまけするから買ってって」と、おばちゃんが明るく言った。
先ほどラジオから流れてきた気象情報では、大型の台風10号は沖縄の南に接近中、前線が本州付近を南下中とのことだった。
でも、台風が関東に近づくのは週明け頃なので、多少の雨は降るもののキャンプには影響は無いと考えていた。
「また台風が来てるから気を付けて行くんだよ」と、おばちゃんの見送りを後にして、マイタケとヒラタケを山ほど抱えて奥利根に向かう。
コツナギ沢は貸し切り状態!
ダムサイトに到着したのは9時30分、水は満水に近い9割程度、紅葉にはまだ少し早いようだが禁漁の期間に入ったこの時期は人影も少なくキャンプをするには絶好のシーズンなのである。
僕は車からキャンプ道具を降ろし、明日から来る斉藤さんと高岸君の為に、もう1艇別に積んできたタンデム艇のポイント5を車に乗せたまま駐車場に止めておく。
雨が降り出す前に急いで出艇準備を済ませ、今回のキャンプ地となる左側の奈良沢に向かう。
紅葉した山々を鏡のように映す湖面を玉淀の怪人海津ソランダープラス、発熱体飯田テルクワスポーツ、企画広報編集人寒河江ディスカバーの3艇は奥利根へと漕ぎ進む。
キャンプ地決定のために先にテント場の広い奈良沢をのぞくが、すでにキノコ取りの人がテントを張っているのが見える。
上陸してみるが、どうせなら人のいない方が良いと言うメンバーの意見を尊重して、隣のコツナギ沢へ移動をする。
コツナギ沢には人影もなく、流木も豊富にあり、景観も申し分なし!キャンプ地決定だ!
上陸してみるとここもやはり沢の流れが幾筋も変わった跡があり、大雨が降ると一晩で大きく川の流れが変わることが予想される。
「よし、あの上まで荷物を上げようか!フネはそこまで上げて、ロープで舫っておこう」と、場所を決めて足場の悪いところを次々と荷物を担ぎ上げていく。
タープとテントを張り、テーブルを広げイスに座り缶ビールを開け廻りを見渡す。
「う〜ん!紅葉もいいね!本当にいいね!何となくいいね〜!」と、メンバー達が口々にする。そこへ、遅れて来た町役人南雲パフィンが登場して、本日の参加者が揃った。
信濃川フルーツカップ優勝祝賀会?
南雲さんのテント設営も終わりのんびりと昼食を取り始める頃には、厚い雲から雨が落ち始め本降りになった。
入れ替わり立ち替わりレインウェアーを着込んだメンバー達はタープの下から飛び出し、何度か焚き火を試みるが、一度燃え上がった炎も常に面倒を見ていないと消えてしまう程の雨である。
焚き火をあきらめたタープの下では今夜のメインディッシュとなるキノコ鍋が、「コトコト」と良い音を立て始め、テーブルの上では飛騨こんろでキノコが焼かれる。
今回はつい先日行われた信濃川フルーツカップの優勝祝賀会も兼ねているので、ESSAクラブの高田さんからおみやげに貰った「越乃寒梅」が祝い酒として参加者に振る舞われ、フルーツカップで完全優勝と堂々3位入賞という偉業を成し遂げた僕と飯田君の自慢話がダラダラと続く……。
辺りも暗くなりランタンに明かりが灯され、キノコ鍋もでき上がり宴会へと突入していく。
「持ってきたよ!」と、海津さんが何と!10匹の秋刀魚を差し出した。
「オレも持ってきた8匹」と、これまた南雲さんもクーラーバックを指さす。
合わせて18匹、いったい1人何匹の秋刀魚を食べれば許してもらえるのだろう……。 早速、海津さんが炭火の上で秋刀魚を焼き始め、飯田君が大根下ろしを作る。
「そろそろ、おでんも出来た」と、南雲さんは今回もダッチオーブンを持ってきたが、焚き火が出来ずに、その使い道がなく仕方なく七輪のうえで飯田君が持ってきたおでんを温めていた。
この季節は鍋におでんに熱燗だ!と思っていたのだが、なかなか気温が下がってこない、きっと台風の接近で南から暖かい空気が入り込んでいるためだろう。
時折ラジオから台風情報が流れてくると、みんな一斉に黙って耳を傾ける。
「10月16日午後9時、気象庁の発表によると台風10号は、九州の南海上を接近中、東海から西は次第に風雨が強くなるでしょう……」
「この分だと関東に影響が出始めるのは、週明け頃かな」などと、みんなで話し合っていた。
思ったようなでかい焚き火もできず気勢の上がらないないまま、雨音のするテントへと早々に退散する焚き火偏愛者たち。
奥利根最大の焚き火に挑戦だ!
明けて17日、昨日からの雨は降り続き、沢の水も少し増え始めているようだ。
ラジオから流れる天気予報では、台風10号は更に九州に接近し、前線を刺激してこれからまとまった雨が降るようなことを言っていた。
しかし、天気図とか台風の進路予想や予報円という情報が無いと、どうもピントこない。
本日やってくるメンバーは用心棒武藤、笑顔の斉藤とその川仲間の高岸君の3名なのだが、果たしてこの雨の中を本当に来るのか疑問である。
朝食が済んでしまうと他にやることもなく、何度か焚き火を試みるが、昨日同様に土砂降りの雨が邪魔をする。
「流木の芯は乾いているから、一度燃やしてしまえば何とかなるんだけど……」と、僕は雨に濡れた指先を見つめる。
しびれを切らした南雲さんは、少しでも雨を避けることの出来そうな大きな流木の下に、焚き火の火種を移しはじめた。
「南雲さん、これなら行けそうだ」と、急にやる気を出し走り回るメンバー達。
そだ木を集め小さな焚き火を作り、外側に雨よけに段々と太い流木を立てかけ、乾かしながら徐々に炎を大きくしていく。
「もう、11時過ぎだね、武藤さん来るかな」と、湖の方に目をやる。
「武藤さんは来ないと思うよ」と、飯田君が雨にけむる湖面を見ながらポツリと言った。
「斉藤さん達は来るでしょう……、だってちゃんと2人艇もキノコ鍋も用意してあるし」と、僕は厚くたれ込めた雲のかかる山間を見つめる。
「高岸君はあまりキャンプ馴れしていないから」と、海津さんは焚き火の面倒を見に、雨の中に出ていった。
しかし、その頃ダムサイトでは斉藤、高岸コンビが出艇の準備を始めていたのだった。
来なかったら逆さ張り付け拷問だ!
土砂降りのダムサイトに到着した2人は駐車場でポイント5を積んである僕の車を発見し、他の車にはカヤックが無いのを確認して、荷物をフネに詰め込み、まだ見ぬキャンプ地に向け左側ベタベタに漕ぎ出した。
と言うのも2人とも奥利根は初めてなのでインターネットメールで現地情報を送っていたのだが、場所が良く解らないから、左側ベタベタに漕いで行きますと斉藤さんから返信メールが届いていたのだった。
一方のキャンプ地では、明日仕事がある飯田君は今日帰るか明日の早朝に帰るか?まだ迷っているし、雨は止まないし、本日からの参加者も来ないし、台風は近づいているし、昼飯を食べて撤収しようか、などと話をしていた……。
そんなところに斉藤、高岸コンビが雨に煙る湖面から現れた。
「来た!来た!」と、飯田君が叫んだ。
「よく来たね」と、僕は喜んで2人を出迎える。
「だって、来ないとカヌーに縛り付けて逆さ張り付け水責め拷問だ!ってメールが入っていたんだもん」と、笑顔の斉藤が笑顔で答える。
着替えを済ませた2人はタープの下にイスを広げようやくホッとしたようだ。
「台風の状況は?」と、僕はキノコ鍋をすすめながら2人に聞いた。
「台風は九州の南側を縦断し四国に再上陸しているみたいですよ、その後は日本海側に抜けるって言っていました」と、斉藤さんが教えてくれた。
「それじゃ、これから更に南の湿った空気が入り込むからもっと雨が降るのかな……」と、頭の中で天気図を思い描いてみる。
「誰か他にダムサイトにいなかった」と、飯田君が質問をする。
「武藤さんも来るって言っていたんだ」と、僕は2人にビールを勧め、キノコを焼き始める。
「他には誰も、僕ら2人だけ、でも、たきぎ工場って、本当に雨の中でも焚き火をするんですね」と、高岸君がキノコを頬張りながら答える。
「この土砂降りの雨でも昨日からずっと交代で、火を絶やさなかったんだから、今夜の当番は斉藤さんが今晩1時から高岸君は3時から!」と、僕は冗談を言いながら焼き鳥を焼き始める。
奥利根災害対策本部が動き出した!
お腹も膨れ、少しアルコールも呑み疲れたころ南雲さんが何やら動き出した。
この人はキャンプに来ると、何かに取り付かれたように動き回る事が時々ある。
自分が張ったテントの脇に沢が流れた跡があり、今回はどうやらそれが気になっているようで、テントを囲うように石を積み上げ、スコップを持ち出し砂で盛り土をしているようだ。
「南雲さん、そこまでは水は出ないと思うよ」と僕が言っても黙々と作業を続ける町役人南雲。
このキャンプ地は沢が湖に流れ込む砂地にあり、ちょっとした増水ですぐに川の流れが変わってしまう場所なのである。
更に降り続く雨で、キャンプ地にタープを張っているすぐ脇の岸が徐々に浸食されてきている。
自分のテントの災害対策を終えた南雲さんが再び動き出し、川の流れを変えようと沢の中に入り込みゴロタ石を流れに向かって投げ込み始めた。
それを見ていた海津さんや斉藤さんも沢に入って石を投げ始めたのを見ていると、あまりにも楽しそうなので僕も沢の中へ、結局みんなして本格的な護岸工事が始まってしまった。
長靴を忘れてしまった高岸君は、残念そうにカメラ片手に護岸工事現場の記録を撮る。
それをよそ目に、本日もう1泊を決め込んだ飯田君は明日の朝一番で帰る準備を始めている。
「テントもたたんじゃうの」と、僕が聞く。
「身の回りの物以外の荷物はまとめて、今夜はシュラフカバーがあるので、タープの下で寝ます」と、明日の朝5時出艇の決意をしたようだ。
今夜のノルマは1人2匹の秋刀魚だ!
ミソ味だった昨日のキノコ鍋を今夜はしょう油味に変え夕食の準備を始める。
辺りが暗くなってきても、海津さんまでも何かに取り付かれてしまったかの様に、南雲さんと2人で護岸工事の完成を目指している。
雨は幾分小振りになったようだが、山間の雨水が集まる沢の水は増水を続け、少し風が出て来たのか、タープがバタ付き始めている。
「今日のノルマは2匹だ!」と、海津さんが炭火の上での秋刀魚を焼きはじめ飯田君が絶品のマイタケの天ぷらを揚げ、斉藤、高岸コンビがマイタケとナスのバターホイル焼きを作っている。
キノコ鍋もでき上がり、斉藤さん差し入れの、知る人ぞ知る群馬は沼田の永井食堂のモツ煮を温め本日も盛り沢山、アルコールは、ビールに日本酒ウィスキーにワイン、もう飲み放題!食べ放題!の大宴会である。
賑やかなタープの下だが、それでも時折ラジオから台風情報が聞こえてくると、みんな気になっているのか?一斉に黙って耳を傾ける様子がとても面白い。
雨はだいぶ小振りになり、変わって徐々に風が出てきて焚き火にも元気が出てきた。 お腹も膨れると自然と焚き火の回りに人が集まり段々とみんな優しい顔になっていく……。
沢の水は増え続けているようで、「ゴンゴン」と石が流れ落ちてくる音が闇夜の中で不気味に響いている。
本日は焚き火に護岸工事、多量のアルコールの摂取で疲れたのか、みんな早々とテントの中へ…。
いや、発熱体飯田だけが明日の朝5時出艇のため荷物をまとめタープの下でシュラフカバーに潜り込んだ。
いったいキャンプ地に何事が起こった?
最初にそれがやって来たのは、午前0時過ぎ、いきなり突風でテントが叩かれた!!
回りの木々がざわめきテントやタープが一斉にバタつき始める。
慌ててテントから出ると、斉藤さんも出てきて、張り綱の引き直し、ペグをしっかりと固定しているところだった。
斉藤さんと高岸君が寝る4人用のテントは天高があるドーム型で風の影響をまともに受けている。
南雲さんのICIゴアライトは、風に振られているが張り綱とペグ打ちでガチガチに固定しているので問題はないようだ。
海津さんは風に強いシェラデザインのテントだが立てた向きが悪いようでまともに風を受けているのがちょっと心配だ。
僕のシェラデザイン「ティロス1」は4本ポールなので風には強く、張った向きも良いが、念のためにペグの上に石を置き砂で固める。
バタ付くタープの下ではシュラフカバーにくるまった飯田君が耳栓をして寝ていた。 タープの張り綱は流木に巻き付け、穴を掘り埋めたので、抜けることはまず無いと安心してテントに戻る……。
テントに戻り寝酒にウィスキーを飲みだすのだが沢を流れ落ちる石の「ゴンゴン」と言う音と山の上から「ゴーッ」と吹き下ろしてくる風の音が気になる。
台風はまだ来ていない筈なのだが、いまどの辺にいるのだろう、などと考えていた……。
「ゴォーッ!」と山の上の方から一段と大きな音が近づいてくる「バタバタバタ」と、キャンプ地一帯を突風が駆け抜けた。
治まっていたと思っていた先ほどの突風から、ちょうど1時間後に再び風が吹き始め、立て続けにキャンプ地を吹き荒れる。
大型のテントが気になり、外へ出てみると無惨にもひしゃげてつぶれた中で、かすかにライトが動き回っている。
「おーい!大丈夫か!」と、大声で怒鳴る!
「大丈夫です!」と、斉藤さんが這い出てきた。
タープの方に目をやると張り綱をあまりにも頑丈に張ったので、耐えきれずにタープは引きちぎれ吹き流しのようになって辛うじて立っている。
「飯田君大丈夫か?テントに来るか」と、僕は声を掛けのぞき込む。
「いや、ここで大丈夫ですよ、さっき何かが飛んでいったけど……」と、寝袋から顔を出した。
張った向きが悪く風をまともに受けている海津さんのテントの中では、大の字になってテントを押さえている陰がライトに浮かび上がっている。
「みんながんばれ……」と、大声で怒鳴る。
壊れたテントが風に飛ばされないように重石を乗せ、斉藤、高岸の2人を僕のテントに呼び寄せて避難小屋とする。
「もうダメ!タープがつぶれた!」と、飯田君も避難してきて 1.5人用のテントは4人が入ると、横になることもできない状態だ。
「これじゃ朝まで寝られないな、酒でも飲むか」と、僕は酒のつまみになりそうな物とウィスキーの回収を命じた。 「ウィスキー発見!……」
「何かつまみ、つまみは……」
「どこかにラジオが転がっていないか……」
外は真っ直ぐに立って歩けないほどの風が吹き荒れ、必死の捜索が繰り広げられる。 テントにもどり酒を飲み始め、ラジオのスイッチを入れ台風情報をみんなで聞き込む……。
どうやら台風10号は日本海に抜け北上中とのことだが、その影響でこの風が吹いているのかはわからなかった。
そして、また一段と強い突風が吹き抜けた!
「今のはちょっと強かったな、海津さんのテントはどうだ?」と、外をのぞく。
「やったー!玉淀の怪人が沈没だ!誰かカメラ、カメラ!」と、外に飛び出す。
その後も突風と戦いながら、一睡もできないまま朝を迎えてしまった。
突風による被害状況を報告せよ!
朝の5時30分、テントの外に出ると突風は依然と吹き荒れ雨も降り続く、タープの下の宴会場は見る影もなく惨憺たる状況だし、キャンプ地の脇を流れる沢は濁流と化し、昨晩とはまた違った流れを作っている。
みんな寝不足のまま起き出してきては、山間を恐ろしく駆け抜ける真っ黒な雲を見上げては、ため息をつく。
そんな中、いつも元気な発熱体飯田は出艇の準備を済ませ、今にも漕ぎだそうとしている。
「飯田君、明るくなるまで待とう」と、このまま一人で行かすのには心配になり引き留めて、もう少し様子を見ることにする。
「取り敢えず飛ばされた物を探そう!」と、指示を出し、捜索に走り回るメンバー達。
「川の中にテーブルが落ちている!あそこに何か青い物が見える、ほらあそこにも赤いのが……」風下にあった沢にかなりの物が吹き飛ばされいるようだ。
 「おい、下に置いてあったダッチオーブンがひっくり返っているよ……」
「あっちを見てみろ、ちゃんと並べてあったフネがバラバラになっている……」と、今だ治まらない風の威力に背筋が凍る思いである。
「寒河江さん、もう行くよ!」と、飛ばされたキャンプ道具の数々の回収作業が進むなか、飯田君が本日出勤のため6時30分コツナギ沢のキャンプ地を後にする。
「まだまだ、突風が吹いて来るから右の岸沿いに行けよ」と、発熱体飯田の無事を祈りつつ、みんなで見送る。
みんな!台風が来る前に撤収するぞ!!
「よし、これ以上天候が悪くならないうちに撤収しよう!」と、僕は風に向かって言った。
みんなはこれから台風10号が更に近づき、もっと天候が荒れてくると思っていたのだ。
風に飛ばされそうになりながらテントをたたみ、ぼろ切れになったタープを丸め、キャンプ道具ををカヌーに積み込む作業が続く。
慌ただしく撤収準備を済ませ、忘れ物は無いか辺りを見渡すのだが、風に飛ばされた物が多くて、もう何が無くなったのか、訳が解らない。
「あそこに、何か青い物が浮いている」と、高岸君が湖面を指さす。
「よし、撤収だ!水に浮いている物は回収しながら行こう、風が強いので右側の岸沿いに行くぞ」と、8時30分キャンプ地を後にする。
途中で海津さんのコールマンのランタンケースや僕の飛騨こんろを入れていたフタ付きのバケツなどいくつかの水に浮く流出物を回収しながら、ダムサイトに向かう。
ダムに近づくに連れ、風は弱まり?雲は切れ?陽が差し始めている???ダムサイトに着く頃には見事な青空に変わってしまった??????
こんなことなら、ゆっくり朝飯を食べてくれば良かった」と、愚痴を言う参加者達。
「九州から四国、西日本を駆け抜けた台風10号は18日未明に日本海に抜け午前9時ごろ、青森県の西の海上で温帯低気圧に変わった……」と、車のラジオから流れてきた。
これから来ると思っていた台風10号は速度を速め一気に日本海側を駆け抜けたようだ!
あの突風が吹いた頃がキャンプ地に一番近いところを台風が通過していたのだろうか?
「それにしても、死傷者、行方不明者無し!まあみんな無事に帰ってこれて良かった!良い経験になったでしょう」と、僕は台風一過の秋空を見上げ、みんなの笑い声が奥利根にこだました。
奥利根キャンプ参加者の被害状況と感想!
発熱体 飯田 テルクワスポーツ
前日から撤収準備をしていたので無傷でした!
96年の富士登山以来の強風のキャンプであり、当初予定していた1泊を2泊にして、貴重な体験ができ、今後のキャンプに自信がついた。
6:30 キャンプ地を後に出艇
7:30 無事にダムサイト着
7:50 積み込み完了、ダムサイト出発
10:10 仕事場へ到着、遅刻する!!
キャンプ地からダムサイトまでは、強風で何度も不安定に!必死で漕いだ!!
信濃川フルーツカップ3位入賞の自信がダムサイトまでのゴールにつながった!!
町役人 南雲 パフィン
1 前日に台風に備えテントの張り綱を頑丈にしておいたが、ポールがテントを突き破っ て出てしまった。
2 カヌーが飛ばされた
山の中だし、そんなに風の影響もないのではと思っていたのだが、想像以上だった。 朝、沢を石がゴロゴロと流れる音が不気味で、水量も多くなり鉄砲水が出るのではと心配だった。耐風性のあるテントの購入を考えています。
玉淀の怪人 海津 ソランダープラス
1 コーヒーサーバーのフタ紛失
2 海苔が入った袋紛失
3 タバコの防水ケース紛失
4 タープポール先端の止め金具紛失
5 タープが裂けた
6 コーヒードリップが割れた
7 テントのポールが2本とも折れた
キャンプお疲れさまでした!今までにないスリリングなキャンプでした。
夜の11:30から寝られなかったです。
笑顔の斉藤 ポイント5
1 潰してしまったテントのポールが折れた
2 チタンシェラカップ紛失
3 ガソリンストーブの燃料タンクのフタ紛失
今回のキャンプでは、図らずも貴重な体験をしてしまいましたが、過ぎてしまえば、これはこれで楽しかったと思います。何よりも、死傷者、行方不明者ゼロであったし……。
気持ちも、特に深刻に追い込まれた訳でもないしアウトドアにアクシデントは付き物ってことで。
ただ、自然をなめちゃアカン!っていうのは、改めて感じましたねえ。朝の待ち遠しかったこと。
記録撮影班 高岸 ポイント5
後から来て店をあまり広げなかったので紛失物は何一つ無し。
お疲れさまでした〜!!&お世話になりました〜!!
石のゴロゴロする音を聞いて、もしやテントごと流されてしまうって事も脳裏にちょっと浮かびました。だって、寒河江さんはライフジャケットをテントの中に置いてあったし……。 (ライジャケは枕代わりにしてました 寒河江)
みなさん全然同様もせずに楽しんでいたので、私も楽しく過ごせました。
企画広報編集人 寒河江 ディスカバー
1 タープがビリビリに裂けた!
2 クラブ伝統のデカ鍋が紛失!フタしか残ってなかった
3 プリムスのチタンカップセット紛失
4 折り畳みテーブルが川の中で壊れていた
『編集後記』
今回の奥利根突風体験ツアーは参加者一同、大好評だった?ので企画人としても大変満足である。
以前にも一度このような突風を同じコツナギ沢で経験していたので、思ったよりも心にゆとりがあり、落ち着いていた自分に驚いている。
(たきぎ工場 企画広報編集室 寒河江)
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